心が折れるようなお客様のきつい一言

確かに、ほかの人に比べればレジは遅いほうだろう。

それでもミスをせずに一生懸命やっているのだ。

混んでいるときだった。

すぐ後ろに並んでいるお客様が、こちらに聞こえるような声で「ここのレジ遅いね」と言っていた。

ふつうは、思っていてもなかなか口には出さない。態度で示すくらい。

なのに、私の耳にしっかりとその言葉が届いてしまった。

そのあと、レジがスピードアップしたのは言うまでもない。いつもならビニール袋に入れるようなものでも、あえて入れずにそのままかごへ入れていった。

まあ、マイバッグとかマイバスケットの場合は、別だけれど、いつものように何でもかんでも入れるのは、やめておいた。

それだけでも多少は時間が短縮される。

たまに、お客様がお金を出すのに手間取っていて、時間がかかってしまうことがある。

それはこちらの責任ではないので、こちらに当たるのはおかしい。

私は、買い物に行ったときには、レジは早く済ませて帰りたいので、できる限り(まあ職場だし、誰が速いかはわかっているので)、早く済みそうなレジを選ぶことにしている。

私だったら混んでいるときは、買う量が増えてしまうけれど、もう一回りして、すいてくるのを待っている。

遅いって思っているなら、別のレジに並べばいいのに。

混雑しているときは、すいているときに比べたら、時間がかかるのは当たり前。

特に、かごから落ちるくらい商品を積み上げてくるお客様もいて、そういう人の後ろには、私だったら並ばない。どんなに速くレジができる人でも、時間がかかってしまうから。

それに、初心者時代に比べたら、早くできるようになったほうだと自分では思っている。

そのお客様は、レジの仕事をやったことがないのだろう。

レジの仕事って、特にスーパーだったりするとかなり神経を使う。

間違っても、玉子のパックの上に、キャベツなど重たいものは乗せない。

ただ、青果売り場が、入口から近いところにあるので、下のほうにキャベツなどの野菜が入っていることはしばしばある。

中には、イチゴを一番下にしている人もいて「え!」となることもある。

歩き回っている間に、イチゴはせめて上のほうにしておいてほしい。

最後のほうに、パンやお菓子があっても、横に並べておけるようにしておきたい。

そのお客様の「遅い」の一言があったときは、私のレジには誰も入ってきてはくれなかった。

だから、一人で頑張るしかなかった。

こういう言葉をわざと聞こえるように言われたりすると「やめたい」と思ってしまう。

わざわざ本人に聞こえるように言うなんて、なんて底意地の悪いお客様なんだろうと。

そんな人が来るお店で働いていたくはないと、その日は本当に思った。

そこでエネルギーを使い果たしてしまったので、閉店のころには、完全に燃え尽きてしまっていた。

ともかく、混んでいるときは、わざわざビニール袋に入れるのはなるべく避けようと思う。

よほど、ドリップが出ていて、袋に入れないとダメとか、バラ野菜とかバラ果物だったら別だけど。

バラの野菜とかでもお客様によっては「いちいち入れなくていい」という人もいる。

「急いでいるんだから、ビニールになんか入れないで」と言われることもある。

「急いでいるんなら、買い物に来なければいいでしょうが」と思わず言い返したくなる。

買い物は時間がかかるものだ。急いでいるときにするものではない。

それだったら、セルフレジのお店に行けばいい。

コンビニとか。

わざわざ混んでいる時間帯に買い物に来るほうがいけないと思う。

まあ、いちいち文句を言いたい人なんでしょう。

こっちは仕事だと思っているので、何を言われても黙って仕事をやっているだけだけど。

わざと愛想よくして、送り出してやろうかと思っている。

言われっぱなしも悔しいし、丁寧な対応をして、相手を驚かせてやろうかと。

こちらは3年目のちょっとだけベテランに入ったくらいで、レジに関してはお客様に比べたら、プロなのだから。

こういうことを愚痴としてこぼせる仲間がいないから、時々、やめたいと思ってしまう。

これからも心が折れそうなことを言われる場面もあるかもしれない。

こちらは、レジとしてはプロなのだと誇りをもって、何を言われても平常心でやっていきたい。

やっていくうちに、さらにスピードも上がってくるかと。